豆類の持つ偉大な力和菓子が好きな方々は、やはり小豆の餡を好まれる方が多いようです。人気の秘密は、独特の風味や味わい、口溶けといったおいしさでしょう。しかし、小豆はおいしいだけではなく、非常に栄養価が高く、素晴らしい機能性を持った食品です。

豆類の持つ偉大な力

タンパク質
小豆の主成分はでんぷんです。100g中約35gのタンパク質を含む大豆に比べると、小豆のタンパク質は約20gと少なめです。しかし、大豆に負けない素晴らしいアミノ酸の組成を持つ良質なたんぱく質を含んでいます。たんぱく質は20種類のアミノ酸から構成されています。 その内の9種類は人間の身体では合成されないため、食べ物から取る必要があり、それを必須アミノ酸と呼んでいます。必須アミノ酸が食材に含まれるバランスの良さを、100を最高値として評価した値をアミノ酸スコアといいます。一般的に植物性のタンパク質のアミノ酸スコアは低いのですが、小豆は82と比較的高いのが特長です。ちなみに米は65、小麦は42です。

ビタミン
小豆にはビタミンB1、B2、B6などのビタミン類が豊富に含まれています。ビタミンB1は、糖質からエネルギーを作り出し、神経の機能を正常に保つ働きがあります。ビタミンB2は脂質の代謝、動脈硬化や老化を進行させる過酸化脂質の分解に役立ちます。皮膚・爪・毛の成長を促す効果もあり、漢方医学では皮膚病の治療に小豆を食べることを勧めていることもうなずけます。ビタミンB6は、タンパク質の代謝、神経の働きやホルモン調節に役立ちます。そのほか、量は少ないながらも、小豆にはビタミンE、ナイアシン、葉酸も含まれています。

ミネラル
現代の食生活では、天然のミネラルが摂取しにくいのですが、小豆はカリウム、カルシウム、鉄などが豊富です。カリウムはナトリウムと拮抗作用があり、ナトリウムの排泄をうながします。カルシウムはどの穀類よりも多く、一般の牛乳に近いほどの量が含まれています。鉄は、血液の中で酵素を運ぶヘモグロビンの構成要素です。身体のすみずみまで酸素を運ぶ働きがあります。女性の冷え症を伴う貧血には、鉄不足も関係します。小豆にはほうれん草より多くの鉄が含まれているのです。

食物繊維
食物繊維の重要性は、今では広く知られています。食物繊維には水(可)溶性と不溶性があり、小豆にはどちらも多く含まれています。不溶性の食物繊維は、体内で数倍に膨張するため腸の蠕動運動を盛んにして、便秘の予防に役立つほか、大腸がんの予防にも効果があるといわれます。水溶性は、血中コレステロールを低下させ、動脈硬化を予防します。小豆には、ゴボウの約3倍もの食物繊維が含まれています。

ポリフェノール
生活習慣病を予防するといわれるポリフェノールは、健康に様々な悪影響を及ぼす活性酸素を除去し、動脈硬化や心臓病の予防、免疫力の増強、抗アレルギー作用、血管の保護、発がん物質の活性化抑制等の効果があるといわれています。近年、豆類のポリフェノール含量と抗酸化活性との間には高い相関関係があり、小豆、金時豆などが高い抗酸化活性を示すことなどが判明しています。小豆に最も多く含まれるポリフェノールはカテキングルコシドです。また、ポリフェノールとは別に、餡をつくるときに小豆に砂糖を加えますが、小豆のアミノ酸と糖が結びついたものを加熱することによって、メラノイジンという物質ができます。この物質にはポリフェノールと同じ抗酸化の働きがありますので、さらに効果は高まります。

ほかにも、小豆にはビフィズス菌の働きを活発にするラフィノース、スタキオースといった物質も含まれています。
小豆を中心に説明しましたが、白餡の原料であるいんげん豆も、ポリフェノールの量は小豆より少ないのですが、ミネラルは小豆よりも多く含んでいます。
健康で豊かな食生活を送るために、不足する栄養素を効率的に摂取できる健康的な食材として豆類は注目されています。和菓子の命ともいえる餡は、その豆類で作られているのです。